コールドマウンテン

コールドマウンテン見ました

「コールドマウンテン」は、チャールズ=フレイジャーの同名のベストセラー小説の映画化作品。南北戦争を舞台にしたコールド・マウンテンは、戦争、特に歩兵戦の凄惨さと、アメリカの山奥の寒村の牧歌的で平和な風景が印象的で、反戦のメッセージを感じます。この作品の最高の強みとは、たとえ何十年経過しても、「素直に良い作品」と言われ続けるだろうこと。ベタともいえる定番の映画だからこその強みを感じます。

あらすじ

南北戦争末期の1864年のノース・カロライナ州コールド・マウンテン。互いが運命の相手だと感じたインマン(ジュード・ロウ)とエイダ(ニコール・キッドマン)。しかしエイダを残して南軍兵士としてバージニア州の戦場に送られたインマンは、瀕死の重傷を負って病院に収容される。脳裏に浮かぶのは故郷コールドマウンテンとエイダの面影。彼は脱走兵になり死罪を覚悟で、故郷への500kmの道のりを歩み出す。そして教養はあっても生活の術を持たないエイダも厳しい生活を強いられていた。そこへ男顔負けの農耕の腕と知識を持つ流れ者のルビー(レニー・ゼルウィガー)が現れ、エイダに逞しく生きる術を教えていく・・・。

解説

この映画は、戦争の悲惨さを描きながら、兵士と彼の帰還を待つ恋人との壮大なスケールのラブストーリー、米国同時代の叙事詩になっています。2003年度のオスカーでレニー・ゼルウィガーが助演女優賞を受賞しました。本作は「風と共に去りぬ」などをはじめとした映画史上に残る大河ロマンの傑作です。

南北戦争の始まり

いったい、なぜ南北戦争は起こったのでしょうか?一般的に南部諸州の奴隷制度を巡る戦いと言われますが、当時の大統領エイブラハム・リンカーンの本来の目的は、奴隷制の廃止ではありませんでした。彼の究極の目的は、アメリカ政府(北部側)が南部の広大な土地と資源、そして市場を支配し続けることでした。映画『Cold Mountain(コールドマウンテン)』の舞台となるサウスカロライナ州のアパラチアには、他の南部の平地地方と異なり、気候が厳しく土壌が痩せていたために大農園はなく、奴隷を所有できる農民も少なかったので、戦争の意味の捉え方も違っていました。「なぜアメリカ人同士が血で血を洗うような戦いを続けるのか?」という疑問を映画でも描いています。

インマンとアイダの愛

『コールド・マウンテン』では、主人公が決死の覚悟で会いに行く恋人が、決して長く連れ添った相手ではなく、ただ一度キスを交わしただけの女性という点が、よりドラマティックな効果を生んでいます。インマンとアイダは何故あそこまで惹かれあったのでしょうか。あんな夢も希望もない時代だから、誰かがどこかで自分のことを想ってくれているとでも思わなければ、希望を見出せない戦時中という時代だったからでしょうか。

登場人物

コールドマウンテンはキッドマン、ロウ、ゼルウィガー全員が見事なぐらいにはまっています。エイダ役は二コールキッドマン、インマン役にはジュード・ロウが扮し、それだけだと美男美女のありがちなストーリーになるところを、見事に良い意味で裏切ってくれます。元々起用な役者でしたけど、本作でニコールキッドマンは芸域をますます広げた印象を受けます。しかし、特筆すべきはロウとゼルウィガーでしょう。この二人とも、本作で演じたようなキャラクターを今まで演じたことが無かったはずです。特にルビーを演じるレニー・ゼルウィガーの演技は素晴らしいです。農場の仕事になかなか慣れないエイダを支える、逞しく、魅力的な女の子を演じています。ちなみにナタリー・ポートマンも脇役で登場しています。

人物像

主人公のインマンは地元村の大工で、物静かで朴訥(ぼくとつ)な好青年。しかし、戦場などでの過酷な体験から徐々に変貌します。ただ、苦しい生活を強いられながらも、何とかしてエイダに会いたいという一途なところが魅力です。一方、ヒロインのエイダは都会から同村に引っ越してきた牧師の娘で、お嬢さん育ちという設定。知識や教養は十分、兼ね備えていますが、実生活などの経験値は弱いといえます。ですが「風と共に去りぬ」のスカレーット・オハラのように芯が強く気丈な一面もあります。

義勇軍

コールドマウンテンの開拓地のまちには、壮年期の男たちは1人もいなくなりました。なぜなら彼らはみんな出征してしまったからです。残っているのは、若すぎるか年をとりすぎているかで軍隊に入れない男とあとは女、子供ばかり。この中途半端な年齢の男たちが組織するのが義勇軍。一方では街や農場をゲリラや盗賊から守ったり、脱走兵を捕まえたりという重要な役割を果たすものの、その一方で女、子供しかいない街で、権力をカサに着て威張ったり、悪事を働く悪い義勇軍もいたそうです。まさにコールドマウンテンの義勇軍のボス、ティーグ(レイ・ウィンストン)はそのワルの典型的なキャラクターです。

演出・カメラワーク

コールドマウンテンは演出の良さも魅力の一つ。主人公のインマンは脱走兵だし、女性二人で生活しているエイダとルビーは、戦場を見ているわけではない。それでも戦争そのものから隔たった所に思い出話でもなければ他人事でもないリアルタイムの戦争を感じる演出が随所に散りばめられています。カメラワークもとても素晴らしかったです。定番の物語を新しい演出で描こうとするなら、当然これは必要。キャラクターの映え方はこのカメラ・ワークに負うところが大きく、見事な描写でした。

愛の言葉

作品のメインテーマとなっている2人の想いの深さは、冒頭のワンシーンに登場するキーフレーズで表わされています。それは、エイダが父レバレンドと移動中の馬車の上で亡き母の思い出を語らう場面。それまでエイダに対して話をしていたレバレンドが、ふと誰に伝えるでもなく想いが口をついたようにこうつぶやきます。『I lost your mother after twenty-two months of marriage. It was enough for a lifetime. 』「私は結婚して22ヶ月で彼女を失った。それは一生分に値する長さだった」人が人を愛するとき、どれだけ共に過ごすということよりも、どれだけ深く愛するかが最も大事なこと。愛する人を失うことはこのうえなく辛いことですが、互いの想いが十分通じていれば、レバレンドのように過去を後ろ向きにではなく、幸福な気持ちで振り返ることができるのかもしれません。

スタッフ

  • 監督:アンソニー・ミンゲラ
  • 脚本:アンソニー・ミンゲラ
  • 音楽:ガブリエル・ヤーレ、T=ボーン・バーネット、ニコール・キッドマン

キャスト

  • ジュード・ロウ:インマン
  • ニコール・キッドマン:エイダ・モンロー
  • レネー・ゼルウィガー:ルビー・シューズ
  • ドナルド・サザーランド:モンロー牧師
  • ナタリー・ポートマン:セーラ
  • フィリップ・シーモア・ホフマン:ヴィージー
  • ジョヴァンニ・リビシ:ジュニア
  • レイ・ウィンストン:ティーグ
  • キャシー・ベイカー:サリー・スワンガー
  • ジェームス・ギャモン:エスコー・スワンガー
  • アイリーン・アトキンス:マディ

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