ザ・インタープリター

ザ・インタープリター見ました

ニコール・キッドマンが演技派ショーン・ペンと競演した政治サスペンスドラマ。大統領暗殺計画に巻き込まれた女性通訳と、彼女を守るSSの姿を描いています。脚本を手がけたのは、「シンドラーのリスト」でアカデミー脚本賞を獲得し、「シビル・アクション」などで監督としても腕を振るうスティーブ・ザイリアンと「ゲット・ショーティ」、「マイノリティ・リポート」を手掛けたスコット・フランク。監督のシドニー・ポラックは近年プロデューサーとして「コールド・マウンテン」や「アイリス」などアカデミー賞絡みの作品を送りだしています。「ザ・インタープリター」は「ランダムハーツ」以来の監督作です。ひとりは重い過去を背負って生きてきた。もうひとりは重い過去を背負ったばかり。そんな二人の物語です。

あらすじ

国連で通訳として働くシルヴィアは、アメリカと生まれ故郷であるマトボの2重国籍所持者である。マトボのクー語を自在に操れる彼女は、平和の為に役立とうと5年前から通訳の仕事をしていた。そのマトボの現大統領が国連で演説をする事になった。その矢先に、シルヴィアは誰も居ないはずの会議場からもれる囁き声を耳にする。それは、マトボのズワーニ大統領暗殺をほのめかす内容のものだった。一日考えた結果、彼女は上司に報告するが、すぐに通報しなかった事により不信感を与えてしまい、痛くない腹を探られる事になる。彼女が必死に隠そうとしているものは何なのか?彼女はこの暗殺計画にどこまで咬んでいるのか?巨大な陰謀とワケありな過去の複雑にもつれた糸がほぐれはじめるとき、ふたりの孤独な心がすこしづつ居場所を求めて動き出し…。

解説

アフリカの民族紛争をテーマに盛り込んだ社会派サスペンスです。この手のサスペンス映画として至ってありがちなあらすじなので、よくある巻き込まれ型のサスペンスかと観ていると、良い意味で裏切られます。主人公であるハズのシルヴィアに何かしらの秘密があるらしく、シークレット・サービスの目を盗んで人と逢っていたり、あろうことか容疑者のひとりと目される大統領の対立者にまで接触します。計画がバレても銃を突き付けられてもまったく動じない事件の黒幕。そんな人物でさえ、かつてのシルヴィアや冒頭の少年たちと同じように、変わらざるを得なかった者のひとりであり、もはやそれが取り戻せないものであると改めて実感させるクライマックスは決して綺麗ごとではない終わり方めで、なかなか印象に残ります。

意味

国連では言葉の異なる世界各国の代表が会議をしなければならず、そのために世界中の言語を同時に正確に通訳するための人たちがいるんですが、この人たちがインタープリターです。ニコール・キッドマン演じる主人公シルヴィアは、このインタープリターの仕事をしています。

問題提起

「ザ・インタープリター」を見ると国連外交の限界を感じてしまいます。結果的にこの映画が描いているのはアメリカ主導による国際政治を欺いているものでしかないともとれるからです。架空の国を設定することで現実の南北問題をぼかしていますし、国際警察としてアメリカは正義を振りかざしています。しかし堅苦しくリアリティを追求したノンフィクションでは、多くの観客の目には触れることは出来ません。たとえフィクションであっても多くの人の目に触れ、そのような問題があることを知ってもらうことが大切ではないでしょうか。そういう意味では、世界情勢に興味のない人達にその実情を知ってもらう方法として、この映画は有効だと思います。スタッフ・キャストともアカデミー賞受賞者で固められた手堅い仕上がり。何よりも、その知られざる国連内部を映画を通して見ることが出来るだけでも、この映画の観賞価値は十分あるといえるでしょう。

監督と脚本

撮影監督は「セブン」や「パニックルーム」でデビット・フィンチャーと組み、「デリカテッセン」以来ジャン・ピエール・ジュネの片腕として独特の陰影を作り出すダリウス・ゴンジ。俳優を単純にアップで捉えるだけでなく、斜めから正面を向かせる「右斜めショットの美」を得意とするダリウス・ゴンジ。この映画でも多くの会話場面をあえて斜めから撮影しています。そのおかげで30代後半を迎え、これまでで一番美しいニコール・キッドマンをカメラに収めることに成功しています。

キャストについて

ニコールキッドマンの透き通るような美しさは格別です。その外見は決して政治サスペンス向きではないのですが、主演女優としての輝きを放っています。「シークレット・サービスは顔を覚えられないような人間」といいながら風格漂うショーン・ペンを尻目に、「無味」な演技に徹したキャサリン・キーナーは見事。その演技は女性の強ささえ感じさせます。刺客を演じるマイケル・ライトは、かつて日本映画「ベットタイム・アイズ」で樋口可南子と共演した俳優で、久々のハリウッド作品。アジア系の国連警備長を演じたクライド・クサツは「クワイヤボーイズ」以降「ザ・シークレット・サービス」などでよく見かける日系俳優、こちらも久々の大役で、良い演技を見せてくれます。

感想

二コールキッドマンとショーンの演技力により、作品が上映時間が129分でありながらも短く感じました。この映画の主題はそんなアクション的な面ではなく、ニコール・キッドマンとショーン・ペン演じるふたりの主人公がつらい過去とどう向き合って生きてゆくかを描くところにあると思いました。しかも複雑な背景と人物関係がからみ合いながら展開してゆく謎解きの要素まであるので、観る人ごとに異なった表情を見せる映画とも言えます。また、公開当時に、国連内でロケを行ったということで話題になった作品でもあります。アルカイダなどのテロ事件により国際的にもテロ対策が重要視されていたこともあって、公開前は国連でロケをしているのを全面的に出している印象は受けました。実際、ロケなのかスタジオなのかは判らないほど丁寧に作られていて、サスペンス映画としては良作になっていると思います。

キャスト

  • シルヴィア・ブルーム:ニコール・キッドマン
  • トビン・ケラー:ショーン・ペン
  • ドット・ウッズ:キャサリン・キーナー
  • ラッド:イェスパー・クリステンセン
  • フィリップ:イヴァン・アタル
  • ズワーニ:アール・キャメロン
  • クマン・クマン:George Harris

スタッフ

  • 監督:シドニー・ポラック
  • 原案:マーティン・スチルマン 、 ブライアン・ウォード
  • 脚本:チャールズ・ランドルフ 、 スコット・フランク 、 スティーヴン・ゼイリアン
  • 製作総指揮:シドニー・ポラック 、 アンソニー・ミンゲラ 、 G・マック・ブラウン
  • 製作:ティム・ビーヴァン 、 エリック・フェルナー 、 ケヴィン・ミッシャー
  • 撮影:ダリウス・コンジ
  • 美術:ベス・A・ルビノ
  • 音楽:ジェームズ・ニュートン・ハワード
  • 編集:ウィリアム・スタインカンプ
  • 衣装(デザイン):サラ・エドワーズ

にこーるきっどまん